国際結婚

「在留資格」取得の前提となる婚姻手続(国際結婚)

国際結婚と言っても最終的には「在留資格」の取得がゴールになるのですが、前提となる婚姻の手続き(国際結婚)が必要になります。

 結婚したら当然夫婦は同居するんだから、日本に(あるいは配偶者の国に)住めるだろうということにはならないのです。現実には婚姻の手続きはすませたものの、在留資格が取れずに最終的には結婚が破綻してしまったという例はとても多いのが現実です。

 なぜそんなことが起きるのかというと、在留資格を得るために結婚する、いわゆる偽装結婚が多く発生しているという現実があるため、在留資格審査当局が疑心暗鬼になってしまっているからです。

 そもそも、日本でも明治時代の在留資格は現在ほど厳しいものではありませんでした。それが現在のようになったのは、貧しい国から豊かな国での、より良い生活を求める人が日本を目指すようになったからで、これは世界の先進国では共通の状況です。

 

国際結婚の具体的手続き

韓国人との国際結婚

 日本の婚姻手続きのイメージはみなさんお持ちでしょうが、外国では日本とは全く異なる考え方で結婚の手続きが進みます。その例の手始めに、実例も多くて日本との共通点も多い韓国人との国際結婚手続きについて具体的に書きます。

 日韓両国に婚姻届けを出す

  ・あとに出す方は報告的(後述)届け出になる。
  ・各証明書等には翻訳を添付すること。
  ・外国人側はパスポートも提出

 双方で戸籍謄本を用意する

  ・日本で本籍地に届けるときは戸籍謄本は不要
  ・韓国で届けるときは日本人は婚姻要件具備証明書も出す。
    (在韓国日本大使館で発行してもらう)
  ・韓国の戸籍(家族関係登録簿)5種類のうち、

    日本で届け出るときは、

      基本事項証明書
      家族関係証明書
      婚姻関係証明書

    韓国で届け出るときは

      婚姻関係証明書のみ

 韓国と日本は言葉も違いますし役所の制度も同じではありませんが、基本的には同じことを双方の国で行うことになると考えることができます。

 もちろん、同じことをとは言っても、先に届け出た国ではその時点で婚姻は法的に成立しています。そのことを他方の国の戸籍に記載するために「報告的」に届け出るわけです。

 どこでもこれと同じように進むのかというと、全く違うことのほうが多いのです。

イギリスの結婚手続き

 日本で先に婚姻届けを出したら、イギリスへの届けは不要。

  ・イギリスで先に結婚手続きしたら、報告的に日本に婚姻届けが必要。
  ・各証明書等には翻訳を添付すること。
  ・手続き時は外国人側だけではなく、双方がパスポートを提出する。

 日本人は戸籍謄本を用意する。

  ・日本で本籍地に届けるときは戸籍謄本は不要
  ・イギリスで届けるときは日本人は婚姻要件具備証明書も出す。
    (在英国日本大使館で発行してもらう)
  ・イギリス人は日本で届け出るとき婚姻要件具備証明書を出す。
    (日本の英国大使館でも発行できる)
 イギリスには戸籍がないこと、報告的届け出がないことが特徴です。

また、イギリスで先に結婚届をするときには、事前にライセンスを得たうえで儀式を行います。
 日本で、大正天皇が行って以来庶民にも流行して今に続く神前結婚式のモデルですが、日本のものとは違い、法律婚には必須の儀式です。

 何度も書きますが、この先の在留許可のほうが難関であることを承知しておく必要があります。そのため、実質的な婚姻関係にあることの証拠をきちんと揃えておくことが重要です。イギリスで婚姻手続きをするために入国するときもフィアンセビザで入国するなど、在留許可申請の専門家(日本であれば資格を持った国際業務専門の行政書士)に事前に相談してください。

入籍で結婚が成立する国

  入籍(戸籍に記載する)ことで結婚が成立する国は、中国をはじめ、日本・韓国・台湾などの東アジアの国々です。

日本

 日本では婚姻届けを出せば正式に結婚が成立し、新たな戸籍が作成されます(以前は、分家しないかぎり親の籍のなかで配偶者を記載していました)。

中国

 中国でも、婚姻登記所に届け出て戸籍(居民戸口簿)に記載すれば正式に結婚は成立し、写真付きの免許証のような結婚証を受け取ることができます。(実際の手続きや必要書類は地域によって違う可能性があるので、確認が必要です)

韓国

 韓国でも市役所に婚姻届けを出して戸籍(家族関係登録簿)に載れば正式に結婚は成立します。

台湾

 そして、台湾でも役場に婚姻届けを出したら結婚は成立し戸籍に婚姻の事実が記載されます。

 このように、日本、韓国、中国、台湾では儀式ではなく、役所への届け出が重要な要件として結婚が成立します。

入籍で結婚が成立しない地域

香港

 香港では英国の植民地であった時期が長いので、役所に届けを出せば即日結婚成立はなく、イギリス方式の影響がある儀式方式です。

 まず結婚登記所の予約が必要です。3か月以上経った日が予約日として指定されますので、そこに証人二人とともに出頭して入籍式という儀式が行われます。それが完了すれば登録簿に記載されます。

その他

 日本や中国本土、韓国、台湾などでは入籍のイメージで手続きが進み、届け出と同時に結婚が有効に成立します。ところが、英米や欧州はもちろん、その他のアジアの国でもそれぞれ違いはありますが、戸籍と称するものにに書き込むことが結婚ではありません。

 イギリスの結婚で、英国国教会で手続きを行うことができることを書きましたが、もっと多いのはインドネシアですし、教会もでできるのではなく、教会(イスラム教、ヒンズー教、仏教、カトリック、プロテスタント)の儀式が必須です。

両方式の比較

 儀式を重視する方式では、その儀式に公示と、異議申立ての機会を提供し、結婚の成立を確かなものにするという重要な役割を持たせているのです。

 一方、戸籍記載方式では、記載事項の正確性を保ち、権威付けを工夫しています。ただ、現在では特に日本では個人情報との関係もあり公示機能が失われているので、難しい局面にあるとも言えます。

どちらで結婚手続きすべきか

 日本で結婚の手続きができれば、その方が簡単な場合が多いと考えられますが、実は相手国によっては、日本入国のためのビザ(査証)の発行に手間取ることも考えられますので、すでに日本で在住許可を持っている方との結婚でない場合は、こちらから相手国に行って結婚手続きすることが現実的な場合も多いのです。

 ただし、何度も書くように、届け出すればすぐに結婚できる国はほとんどありません。ですから、事前に十分に下調べをして、届け出から完了まで期間、滞在する予定で出かける必要があります。

婚姻要件具備証明書

婚姻要件具備証明書とは、その名の通り結婚するための法的な要件を備えていることを証明する書類です。日本人が市町村役場に婚姻届けを出すときに、本籍地以外であれば、戸籍謄本の提出を求められますが、この戸籍謄本によって婚姻要件を具備している人からの申請かどうかを判断しています。外国の人と日本人が、その外国で婚姻手続きをするためには、戸籍謄本ではなく、婚姻要件具備証明書を提出することになります。

 日本人はどこで発行してもらうか

 日本では市町村役場でとることができますが、国によっては法務局発行のものに限定していますので、法務局で取得するようにします。
 韓国では、在大韓民国日本国大使館に戸籍謄本を提出して取得することができますし、台湾では予め戸籍謄本を日本の台北駐日経済文化代表処の事務所で認証したうえで、公益財団法人日本台湾交流協会の台北事務所あるいは高雄事務所に提出し取得することになります。
 中国では日本の法務局が発行した婚姻要件具備証明書を、日本の外務省で認証したうえに、さらに在日本の中国大使館が認証する必要があります。

 このように、必要書類も認証手続きも各国で違いますので、外国での結婚手続きをしようとする際には、事前によく調査する必要があります。国際業務を専門とする行政書士事務所にご相談ください。

外国人に戸籍は無いが記載はされる

 日本で結婚とは戸籍に載ることだと言えます。日本人は当然戸籍がありますが、結婚した相手である外国人は日本人ではありませんから戸籍はありません。それでは婚姻届けを市町村に出した場合、戸籍はどうなるのでしょうか。
 日本人は結婚すると、現在の両親の戸籍から外れます(除籍)。そして、新しい戸籍が作成されます。しかし、当然ながら、戸籍には一人しか記載されません。
 しかし「戸籍に記録されている者」の下欄に「身分事項」として「出生」と「婚姻」が記載され、その「婚姻」の欄に外国人である配偶者との「婚姻日」さらに、「配偶者氏名」、「配偶者の国籍」、「配偶者の生年月日」等が記載されます。
 これで日本人配偶者の戸籍謄(抄)本を取れば結婚しているということが証明できます。

 なお、外国人にも住民票はあります。

戸籍の氏(うじ)の記載

 そこで、外国人と結婚して新たに作成した戸籍には、やはり氏名が記載されているだけで、従前の氏名とは変わりません。両親の戸籍謄本を取っても、その婚姻の欄には【称する氏】の欄はありません。
 外国人配偶者の氏を使用したいという場合は、婚姻の日から6か月以内であれば、戸籍届出窓口に氏の変更の届出をするだけで、外国人配偶者の氏に変更することができます。

 戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第十五節 氏名の変更の②に「外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。」との条項があることによります。

 この条項を適用する根拠は「法の適用に関する通則法」(平成十八年法律第七十八号)の第五節親族の(婚姻の効力)第二十五条にある「婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。」という条文を適用しているのではなく、法務省民事局長通達によります。(昭和40年4月12日民事甲828)

国際結婚後、外国人配偶者が帰化した場合の氏

 国際結婚したとき、夫婦は必ずしも同一の氏を使うことにはならないが国際結婚後に帰化して双方が日本国籍となった場合は、日本の民法が適用され、配偶者どちらかの氏を使用することになり、それが戸籍に掲載されます。

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